皮膚トラブルが改善する機序
1.皮膚は本来何もつける必要がない臓器
皮膚は、胃や腸と同じ、身体の臓器の一部です。
身体の一番外側で、紫外線や細菌・ウイルス、化学物質などの侵入を防ぎ外的刺激から体内を守っています。
つまり、肌は体内に何も入り込ませない機能を持っているといえます。そのため泥水に手を入れても肌にしみこむことはありません。
皮脂膜
皮膚はいくつもの薄い層で構成されています。 それらの層の一番外側にあるのが「皮脂膜」。汗と皮脂から作られる天然の保護膜です。
皮脂膜は、皮膚を外界の刺激から守りながら、その表面を滑らかで潤いあるものにしています。健康な素肌には自ら潤いを作り出す力があるのです。皮膚はそれ自体で完結している器官です。
皮脂膜が守ってくれているからこそ、皮膚は健康な状態を保つことができ、「体内を守る」という本来の役割を果たすことができます。
皮膚常在菌
私たちの肌には、約1兆個もの皮膚常在菌がすみつき、皮脂膜とともに、肌の健康を守っています。皮膚常在菌は汗、皮脂を取り込み、脂肪酸やグリセリンを産生します。
産生された脂肪酸やグリセリンを取り込む皮膚常在菌も存在し、精妙なバランスで共存しています。このバランスが整った状態で悪性菌の繁殖を防ぐことができるのです。
皮膚常在菌のバランスが乱れると、通常は皮膚の上では増殖しない菌が増殖しやすくなったり産生された脂肪酸により「脂漏性皮膚炎」になったりすることがあります。
2.皮膚生理を乱す要因
保湿
化粧水、乳液、美容液、オイルなどしっとりした使用感のものをつけてしまうと、皮脂分泌の妨げとなり、皮膚は自ら潤う力を発揮できなくなってしまいます。
殺菌、洗浄
石けんやボディソープ、洗顔料、クレンジング剤での洗浄をしたり、殺菌効果のあるものを肌につけると、皮膚常在菌も殺菌してしまい、バランスが崩れることで悪性菌が繁殖しやすくなります。
外傷(角質層が破れる)
スクラブ入りの洗顔料で洗ったり、ナイロンタオルでごしごしこすったりしたときなど、物理的に角質層に傷がついた状態。出血したり体液が滲出します。処置が必要です。
タンパク質を変性させるものとの接触
皮膚が傷んでいる状態とは、皮膚のタンパク質が変性したり傷ついて修復されないときのことです。ニキビや毛穴の開大、赤みや色素沈着があるとき皮膚は傷んでいます。
炎症は生体の防御反応で、傷ついたり、変性を受けた細胞を分解したり修復したりするために起こります。皮膚を傷める(皮膚の防御機能を損ねる)ものにはさまざまなものがあります。
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熱(高温•低温)
タンパク質は高温になると変性します。たまごをゆでると熱変性によりタンパク質が固化しゆでたまごになります。 また、0度以下の低温でも変性が起きます。熱変性が起きた状態は、やけどの状態です。ドライアイスを触ると手をやけどしてしまうことは低温による変性の例です。
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酸変性・アルカリ変性
薬品によってタンパク質に変性が起きます。 塩酸や硫酸(強酸)、水酸化ナトリウム(強アルカリ)によるやけどが一例です。
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変性剤(一次刺激性物質•アレルギー性物質)による変性
界面活性剤や尿素など一次刺激性物質との接触によりタンパク質が変性します。 「一次刺激性物質」とは、炎症の起因物質でありタンパク質変性物質のことで、生きている細胞が接触したら誰にでも変性、炎症が起こります。 身近なタンパク変性の例にタンニンがあります。タンニンを含むお茶やワイン、渋柿を口に入れると渋みを感じます。それはタンニンが舌や口腔粘膜のタンパク質と結合し、タンパク質が変性した際の痛みを「渋み」として感じている ためです。 「アレルギー性」とはアレルギーのある特定の人にしか起こらないことです。
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強い紫外線
強い紫外線は肌に炎症を引き起こします。夏の紫外線の強い時間帯に肌を露出して、紫外線に当たり続けると 15 分~ 20 分で肌に赤み(炎症)が出ます。
3.生活用品に使われる変性剤(一次刺激性物質)
日常的に使用されている生活用品には、使用感改善、洗浄効果や殺菌効果を持たせるために界面活性剤やシリコーンが使用されています。
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基礎化粧品やメイク用品などの化粧品
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シャンプー•リンス
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洗顔料やクレンジング、石鹸などの洗浄剤
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柔軟剤や蛍光増白剤、抗菌剤(スプレータイプのものや洗濯洗剤に配合されるもの)
生活用品に使われる界面活性剤やシリコーンにはタンパク質を変性させる作用があります。
湿疹、皮膚炎や尋常性ざ瘡(ニキビ)、炎症性色素沈着等の皮膚疾患の一因はタンパク変性作用のあるものとの接触です。それらとの接触を避けることで皮膚疾患の悪化を防ぎ、改善させることができます。